生命保険は不要だという人がたまにいますが、本当でしょうか?
ご存じのように、生命保険は万一死亡した場合に家族にお金を残すための保険です。したがって、あなたが死亡した場合に経済的に困る家族がいる場合は間違いなく必要です。生命保険が不要といえる可能性があるのは、扶養家族がいないか、家族に十分な資産を残せる場合のみです。
ところが生命保険には、単純に遺族にお金を残すという機能とは別に、貯蓄機能や相続に関して税金を減らしたり相続を円滑に行えたりするなどの機能があります。このような視点からみると、一見生命保険が不要そうな人でも、実は生命保険を活用できるケース、活用した方がよいケースがあります。
いい加減な生命保険不要論に惑わされるよりも、正しい生命保険の活用法を知って適切な保険に入れるようになりたいと思いませんか?
生命保険が必要な人・不要な人を例示しつつ、あわせて、一見不要そうな人でも生命保険を活用することがメリットになる3つのケースをわかりやすく説明していきます。ぜひこの記事で、生命保険の必要性についての迷いを解消してください
生命保険は本当に不要なのか?
生命保険が不要だと言っている人の意見をネットでみても、保険料が高いのでもったいないといった感覚的な持論や独身者はいらないといった一部の人に限定した話であることが多く、説得力がありません。
この記事では、生命保険が必要な人・不要な人について、きちんとその理由から考えてみたいと思います。
判断の基本は生命保険の役割
生命保険の要・不要に関しては、生命保険が何のためにあるかということが判断の基本となります。
生命保険は、万一死亡した場合に、遺族が経済的に困ってしまうことを回避するために加入するものです。多くの人が少しずつお金を出し合って、たまったお金を一部の困った人を救うために使うという助け合いのしくみに基づいた商品です。このことは、しっかりと認識しておいてください。
自分の収入で家族の生活を支えている人は生命保険が必要
生命保険の役割から考えると、生命保険が必要な人は、扶養家族がいて、もし自分が死亡した場合に家族の生活が成り立たなくなるような人ということになります。
たとえば、結婚してこどもが生まれたばかりのお父さんが死亡したとしたら、残された母子はそれまでの収入が途絶えてしまい生活に困ることになります。そんなときに生活費やこどもの教育費が不足することがないように、生命保険でお金を残す必要があります。
「遺族年金があるから保険はいらないのでは?」という人もいるかもしれませんが、上記家族の場合、お父さんが死亡したときの遺族基礎年金の金額は年額で100万円程度です。会社員で遺族厚生年金が出たとしても、年金の合計額は150万円くらいでしょう。
これで、残された家族が生活できるのか、こどもの教育費は確保できるのかということを考えると、余程の資産でもない限り生命保険が必要なのはあきらかです。生命保険料が高くてもったいないと言っている人がいますが、そういう問題ではありません。多少負担があったとしても必要なものは必要です。
また独身だとしても、自分の収入で親や兄弟の生活を支えているような人であれば同様に生命保険は必要だといえます。
生命保険が不要な人の3つのパターン
生命保険が不要な人は、必要な人の反対で、万一死亡したとしても遺族がお金に困るということがない人です。そのような人としては以下の人たちが考えられます。
天涯孤独な人
扶養家族どころか全く身寄りがなくて、将来的にも結婚せずにずっと1人で生きていくという人であれば、たとえ死亡しても経済的に困る家族・親族はいないため、生命保険は不要です。
現在は独身で扶養家族のいない人
扶養家族がいなければ、たとえ死亡しても経済的に困る家族はいません。自分の葬式代を残せるくらいの生命保険はあった方がいいですが、2~300万円くらいの預貯金があったり、あるいは親が十分に資産があるなどであれば、生命保険は必要ありません。
ただし、将来、結婚して家庭を持ちたいという人やいずれ親の面倒を見ることになりそうという人は、状況に応じて生命保険の検討が必要となってきます。
家族に十分な遺産を残せる人
扶養家族がいたとしても、資産があって、残された家族がこれまでどおりに暮らしていけるだけの金額を遺産として残せるのであれば、生命保険は不要です。
結論!世の中の多くの人は生命保険が必要
ここまで、生命保険が必要な人や不要な人についてみてきました。今は生命保険が不要な独身の人であっても将来結婚すれば必要になってきますし、実際のところ、生涯生命保険が不要だといえる人は、ごく一部の人に限られます。つまり多くの人にとっては、生命保険は必要といえます。
ただし、子育て中などで大きな保障が必要な時期もあれば、子育ても終わり一定の資産も貯まってきて保障がほとんどいらなくなる時期もあり、人生の中でその必要性は変化していくことも理解しておきましょう。
なお、生命保険が必要か不要かというここまでの議論は、あくまでも遺族の生活保障について考えた話であり、実は生命保険の貯蓄機能や相続対策の機能を考えると、生命保険が必要となるケースがあります。このことは次章で詳しくご紹介していきます
不要な人でも生命保険が活用できる3つのケース
それでは、遺族の生活保障以外の目的で生命保険を上手に活用できる3つのケースをご紹介しましょう。
. 老後資金を貯めるために使う
生命保険の中でも、終身保険には貯蓄性があって中長期的にお金を貯めていくことができます。老齢年金だけでは生活が厳しいといわれている時代です。老後の生活資金を蓄えていく手段として、生命保険を活用する価値は十分にあります。
具体例の一つとして、生命保険である低解約返戻金型終身保険を使って老後資金をためるという方法があります。低解約返戻金型終身保険は、保険料払込終了後に解約すると、支払った保険料の総額よりも大きな解約返戻金を受け取ることができます。
<低解約返戻金型終身保険を使った貯蓄例>
保険金額:500万円/保険加入者:30歳男性/保険料:月額9,845円(60歳払込満了)
たとえば、一生独身の人などは、将来誰かに扶養してもらうということは難しいので、老後の生活資金は自分で準備するしかありません。資産形成にあたっては、積み立て貯蓄や株式への投資などとともに、このような生命保険の活用も検討する必要があります。
相続税対策として使う
生命保険の保険金を相続人が受け取る場合、一定の金額までは相続税がかからずにすみます。その非課税枠は、[500万円×法定相続人の数()]となっています。 ()法定相続人とは、民法で定められている遺産相続をする権利のある人のことです。
したがって、通常の資産として遺産を残すよりも、遺産の一部を生命保険金として残した方が相続税の節税につながります。
相続税には、もともと基礎控除などの非課税枠がありますが、それらを超えて税金がかかる場合には生命保険の非課税枠が生きてきます。そのため、遺族に十分な資産を残せる人こそ、相続税の節税に生命保険を活用できる可能性が高いといえます。
遺産を確実に渡すために使う
遺産相続を遺産争族などということがあるように、誰が何を相続するかで遺族がもめる場合があります。それに備えて遺言を用意するというのが基本ですが、生命保険を使えば受取人が限定できますので、特定の人に受け取ってほしい金額を確実に残すことができます。
また、資産が現金であれば遺族が遺産を分け合うことが容易ですが、資産の大部分が居住している家・土地であったり、所有している会社であったりした場合は、遺族が分け合うことが難しくなります。そんなときに生命保険で現金を用意できれば、家や会社を引き継ぐ人とそうでない人の不公平感を軽減してスムーズに相続を進めることができます。
このように、生命保険は相続対策に上手く活用できる商品であり、そのような視点では、むしろ遺族のための生活保障が不要な資産家こそ、必要になってくるといえます
まとめ:生命保険の役割と必要性
ここまでお読みいただいた情報から、生命保険が必要か不要かは一般論として語れることではなくて、生命保険の役割・機能や自分を取り巻く環境を正しく理解したうえで判断するものであることがおわかりいただけたことと思います。
繰り返しになりますが、ここで生命保険の役割・機能を踏まえた活用法をもう一度おさらいしておきます。
生命保険の活用法
万一の場合の遺族への生活保障
将来、必要になる資金の準備
相続税の軽減手段
円滑な相続の実行手段
以上のように、生命保険はいろいろなリスクに備えられる商品であり、多くの人にとって人生の中で必要になるケースが出てくるものといえます。
もちろん、生命保険以外の方法で備えられる場合や備えたほうがよい場合もありますし、過剰に入る必要はありませんが、客観的にみて生命保険が全く不要だという人はほとんどいないのではないでしょうか?
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