競売物件とは?

そもそも競売物件とは

対象の物件を所有していた人が、何らかの事情で物件の代金を支払えなくなったために、オークションのような入札方式で購入者を募ることになった物件を「競売物件」と言います。一般的なのは銀行などの債権者による申し立てによって競売にかけられるケースです。競売にかけられる不動産は、マンション、一戸建て、土地から、事務所や店舗、ビルまでその種類はさまざまです。

競売物件では建物等になにかしら問題があるのではないかと不安になる人もいるようですが、競売になるのは上記のような事情なので、物件の状態が一般の中古住宅と比べて悪いといったことはありません。通常の中古住宅との違いは次のような点にあります。

売主が存在しない

競売は裁判所による不動産執行の手段のひとつです。競売開始の前にその物件は裁判所によって差し押さえられますので、住宅ローン等を滞納してしまった人はその時点で所有権を実質的に失うことになります。また、その人自らの意思で売却をしている訳ではないのでその点からも通常の取り引きと同じ売主とみなすのは少々無理があります(この記事では以降「旧所有者」で統一します)。

では、裁判所が売主かというとそうではありません。裁判所はあくまで手続きを取り進めるのみです。

競売物件に売主がいない、というのはこのような事情があるためです。売主が不在であることは、競売物件の取り引きを進めていくうえで様々な影響をもたらします。この点は後述します。

物件情報が限定される

競売物件に関する情報は裁判所から開示されます。一般に競売の3点セットと呼ばれるもので「物件証明書」「評価書」「現状調査報告書」のことです。売却の条件や権利関係、物件の評価額の詳細理由、物件の現在状況などはこれらの資料から得ます。

競売物件は旧所有者がまだその不動産に居住しているケースが多く、内覧写真や間取り情報、正確な面積等を確認することが困難です。そのためこれら3点セットを見ても満足できる情報が得られるとは限りません。

価格が安い

競売物件の価格が通常の中古売買よりも安くなることは広く知られています。これは競売ならではの特殊事情が考慮されているからです。具体的には物件を取得するに際して旧所有者の協力が得ずらいこと、現在状況を自ら確認しずらいこと、引き渡しを受けるために法定手続きが必要な場合があること、物件について責任を負う立場の人がいないこと、などが挙げられます。競売物件の価格(売却基準額)はこうした要素が反映されるため、いわゆる市場価格よりも安くなるのです。

競売物件のメリット

裁判所で競売にかけられる物件への入札は、一般の人も参加できます。 自分の住みたい地域が決まっていれば、その地域を管轄する裁判所の物件情報を探すことになります。

全国各地の競売情報を一度に検索できるサイト『BIT(不動産競売物件情報サイト)』もあります。このサイトは最高裁判所から委託を受けて運営されているものなので安心して利用できます。競売物件は、一般の不動産会社が扱う整った物件と違い、築年数も種類も様々。山あいの農地、アパート1棟まるごとが入札対象になることもあります。

競売物件のメリットはやはり価格が安いことでしょう。
地域にもよりますが、たいていの競売物件は、一般の相場より価値が低く見積もられているため、おおよそ通常査定の6~7割程度の価格で購入することができます。

落札者の半数以上は不動産業者をはじめとする法人であり、落札後にリフォームをして再販売することが多いようです。これは、再販売しても利益が出るほど、市場価格よりも安く手に入れられているからです。

競売物件の買い方

競売物件の買い方を一連の流れで解説します。

1. 公告・3点セットの閲覧

競売物件が公になり、ここで始めて物件の存在を知ることができます。物件情報については前述の通り3点セットから得ます。

2. 入札

公告時の情報をもとに、いくらで購入したいかを決めます。物件には売却基準額と買受可能額があります。前者は入札の目安価格、後者は最低入札価格を意味します。入札をするときは少なくとも買受可能額以上を設定しなければいけません。

通常、入札は公告のおよそ3週間後から始まり、約1週間で閉め切られます。管轄する裁判所の執行官室で入札用紙を受け取り必要事項を記入します。入札にあたっては保証金が必要です。保証金の額は売却基準額の10分の2に相当します。買受申出保証金という名称で3点セットにも記載されています。

3. 開札

入札が終わるとあらかじめ決められた日に開札が行われます。入札締め切り日から1週間後となることがほとんどです。競売はオークション形式なので、特別な事情がなければもっとも高い金額を入札した人が買受人となります。買受人のもとへは代金納付期限の通知が送られてきます。

4. 代金納付

代金納付の期限は買受人になることが決定してからおよそ1カ月以内です。期限まで入札申出額から保証金額を引いた残代金を裁判所へ納めます。納付が完了することで該当の不動産の所有権は買受人に移転します。なお、登記に関する手続きは裁判所が行いますので、買受人が行うことはありません(登録免許税は必要です)。

5. 不動産の引き渡し

引き渡しは旧所有者が該当の不動産を占有しているかどうかで大きく変わります。旧所有者からの引き渡しが受けられない場合は、引き渡し命令の申し立てを行い、裁判所から引き渡し命令を出してもらう必要があります。強制執行を伴うようであれば、退去執行のための費用が別にかかります。

競売物件のデメリット

市場価格より安く手に入れられる競売物件ですが、ここまで見てきたようにいくつかデメリットもあります。整理してまとめてみましょう。

物件の詳細を事前に知ることができない

物件情報は3点セットから得られますが、その内容は限定的で知りたい情報のすべてが記載されている訳ではありません。また一般の中古住宅の購入であれば当然行う内覧も、旧所有者が専有している状態ではできないことが大半です。物件の老朽化度合いなどが分からないので、取得後のリフォーム代が想像以上に大きな負担となる可能性があります。

売主が不在で、物件に対する責任を問えない

一般の取り引きと同じ意味合いでの売主は競売には存在しません。一般の取り引きであれば、売主には、新たな所有者の入居日までに物件の状態を整えておく等の義務が法律で定められていますが、競売物件にはその縛りがないのです。また、売買契約書が締結されませんので物件に問題があった場合でも売主に契約不適合責任を問うことができません。

取得後に前の所有者の設備等(いわゆる残置物)が見つかっても、購入者が処分しなければならず、屋根の破損が見つかっても、土台がぐらついていても、自分で費用を出して修繕しなければなりません。

引き渡しがスムーズに行われない可能性がある

競売物件で最も懸念され、トラブルにもなりやすいのが引き渡しに関することです。旧所有者が占有している場合は自ら立ち退き交渉をすることになります。すんなり立ち退いてもらえればいいのですが、そうできるとは限りません。裁判所への引き渡し命令の申し立てが必要になることもありますし、命令によって退去が強制執行され費用がかかったときは購入者が負担なければなりません。

また、競売物件が賃貸として貸し出されているようなときは特に注意が必要です。建物に住む人が賃借権を持って引き続いて居住している人の場合、購入者もその権利を引き継がなければならず、容易に退去させることができません。旧所有者のみならず賃貸人ともトラブルを抱えることになりかねませんので、居住実態については3点セットなどでしっかりと確認しておく必要があります。

住宅ローンが組めない

このような事情から競売物件は金融機関が安心してお金を貸せる担保にはなりづらいです。

通常とは異なる申込手続きが必要になり、競売に関して経験やも実績がない個人にはハードルが高いかもしれません。落札金額や住宅ローンの組み方、物件の現況などをアドバイスしてくれる、競売物件の専門業者もいくつか存在するので、実際に入札する際は事前に相談してみるといいでしょう。

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