面会交流権

離婚の際には、父母のどちらが「親権者」になるかを決めることになります。では、「親権者」とならなかった片方の親が、今後、定期的に子どもと会いたいと思った場合、どのようにして子どもと会うことができるのでしょうか。

なお、離婚前であっても、夫婦が別居している場合には、同じ問題が生じます。ここでは、「子どもと面会する権利」つまり、「面会交流権」について知っておきましょう。

面会交流権とは

面会交流権とは、子どもと離れて暮らしている親(以下、非監護親といいます)と子どもが、直接会ったり、それ以外の方法(手紙や写真、学校の通知表の送付、プレゼントの受け渡し等)で、親子の交流をする権利です。なお、面会交流権は、親だけでなく子の権利でもあります。親子である以上、互いに会いたいと思うのは自然のことであり、また、子どもの福祉にも寄与する点があるため、このような権利が認められております。

面会交流の決め方について

最初は、当事者(代理人)同士の話し合いによって、面会交流の可否やその方法、回数、日時、場所について協議します。そして、当事者間の話し合いによる解決が難しい場合には、裁判所が関与し、解決を検討することになります。

具体的には、非監護親が監護親の住所地を管轄する家庭裁判所に、子どもの監護に関する処分(面会交流)の調停を申し立てることになります。調停でもまとまらなかった場合には、審判に移行し、裁判官に面会交流の内容を判断してもらうことになります。

面会交流についての調停や審判について

調停においては、調停員を交えて面会交流の可否、その方法、回数、日時、場所といった具体的な内容を話し合うことになります。この話し合いが適切かつスムーズに行われるようにするために、また、審判に移行した場合に適切な判断がされるために、(1)家庭裁判所調査官による調査(調査官調査)や(2)試行的面会交流を行う場合があります。

(1)家庭裁判所調査官による調査(調査官調査)について

家庭裁判所における調停や審判においては、調停委員や家事審判官である裁判官のほかに、家庭裁判所調査官が大きな役割を果たします。家庭裁判所調査官は、心理学、教育学、社会学など、いわゆる人間関係の諸科学に関する知識、技法、法律知識を活用します。たとえば、子どもが面会交流について、どのような意見を持っているのか、面会交流を実施するにあたり子どもや監護する親に与える影響などを調査します。

調査に際しては、年齢に合わせた方法を行い、子どもの心身状態に十分な配慮をいたします。その後、家庭裁判所調査官の調査した結果は、調停委員が当事者を説得する材料や、裁判官が審判において面会交流の可否、その方法、回数、日時、場所等を判断する際に利用されます。

(2)試行的面会交流について

試行的面会交流とは、子どもがどのように非監護親と接するかを見極めるため、面会交流をテスト的に行い、面会交流の場面における親子の交流状況を観察することをいいます。

この試行的面会交流は、家庭裁判所調査官の立会の下、裁判所内の絵本や玩具が置いてある専用の部屋で行われます。このような試行的面会交流により、実際の面会交流において非監護親や子どもがどのような態度を取るかについて、監護親が確認することができます。

うまくいった場合には、その後の面会交流に対する安心感につながり、スムーズな調停の成立が期待できるといえます。ただし、試行的面会交流は、通常1回しか行われないため、試行的面会交流において親子間のコミュニケーションがうまくとれなかった場合には、面会交流が否定になる可能性もあります。試行的面会交流を行うか否かは、慎重に考えたほうがよいでしょう。

調停で決められる面会交流の内容については、直接面会による方法が多く、基本的には月1回程度で2~3時間程度です。しかし、子どもの年齢など個別具体的な事情により、異なる取り決めがされることもあります。また、監護親が了承することを条件に、子どもが非監護親の自宅に宿泊するという形での面会交流も考えられます。

なお、面会交流時の子どもの引き渡しについては、監護親と非監護親の間で直接行われることが望ましいです。しかし、双方が会いたくない等の事情がある場合には、第三者に引き渡しを頼むことも考えられます。

面会交流権の決定時期

つぎに、面会交流権を決める時期についてです。夫婦が離婚する際に、親権者については必ず取り決める必要があります。ところが、面会交流については必ずしも取り決める必要がありません。ただし、親権者とならなかった親は、離婚後に親権者となった親と面会交流について話し合う機会が必ずあるとは限りません。そのため、離婚する際に面会交流を決めておくことが望ましいといえます。

面会交流が認められない場合について

面会交流を認めることが「子どもの福祉」に合致しないと裁判官が判断した場合、面会交流が認められないことになります。

裁判官は、「子どもの福祉」を判断する際に(1)子どもに関する要素(子どもの意見、子どもの生活環境におよぼす影響)、(2)監護親に関する要素(監護親の意見、監護親の養育監護に対する影響)、(3)非監護親に関する要素(非監護親の問題点)、(4)夫婦の関係に関する要素(別居・離婚に至った経緯、別居・離婚後の関係)等を考慮して、面会交流の可否およびその方法等について判断をすることになります。

(1)子どもに関する要素

  1. 子どもの意見について
    子どもがある程度の年齢に達している場合(特に15歳以上の場合)や子どもが15歳未満であっても監護親の影響を受けずに、子どもが自分の意見をしっかりと述べることができる場合は、裁判所は子どもの意見を重要視する傾向があります。そのため、子どもが明確に面会交流を拒否している場合には、面会交流が認められないケースもあります。
  2. 子どもの生活環境におよぼす影響について
    子どもが両親の離婚問題の影響で家庭内暴力をしたり、不登校になった場合、面会交流を認めることで、子どもの生活環境への悪影響が懸念されるために、面会交流が認められない可能性もあります。

(2)監護親に関する要素

  1. 監護親の意見
    子どもが乳幼児の場合、面会交流を実現するためには、監護親の協力が必要不可欠になります。しかし、監護親が、別居や離婚に至った経緯から、面会交流に消極的である場合には、面会交流を認めることが子どもの精神的安定に多大な悪影響をおよぼす可能性があるため、面会交流が認められない場合もあります。
  2. 監護親の養育監護に対する影響
    監護親の監護方針に不満を抱いている非監護親に面会交流を認めた場合、非監護親が監護親を不当に非難したり、監護方針に干渉したり、監護親と子どもの安定した関係を阻害するおそれがあります。その場合、子どもが精神的に混乱し、監護親との信頼関係が破壊されてしまう可能性があるため、面会交流が認められないこともあります。

(3)非監護親に関する要素(非監護親の問題点)

非監護親に薬物使用の疑いがある場合や、子どもを連れ去る危険性が高い等、非監護親に問題行為・違法行為が存在する場合、面会交流を認めることによって、子どもに重大な危害が加えられる可能性があるため、面会交流が認められない場合があります。

(4)夫婦の関係に関する要素

  1. 別居・離婚に至った経緯
    別居・離婚に至った経緯が、非監護親の監護親や子どもに対する暴力である場合、別居・離婚後も、監護親や子どもが非監護親に対して強い恐怖心を抱いている可能性があるため、面会交流が認められない場合があります。
  2. 別居・離婚後の関係
    別居・離婚の経緯が、別居・離婚後においても尾を引いている場合には、面会交流を認めると精神的負担から子どもの健康状態を損なう可能性があるため、面会交流が認められない場合があります。

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