離婚には、大きく分けて3つの方法があります。・協議離婚:話し合いで離婚を決める
・離婚調停:調停委員を交えた話し合いで離婚を決める
・離婚裁判:裁判の判決で離婚を決める
調停
「裁判」とは、裁判官が対立している双方から話を聞いたうえで、法律に照らしてどちらの言い分が正しいのかを決める制度です。
「調停」とは、対立している双方が話し合いで問題を解決できるように、裁判官や調停委員が同席して客観的なアドバイスをしながら、当事者同士の合意をすり合わせていくという制度です。
「裁判」は裁判官に決めてもらう制度、「調停」は裁判官の介入のもと、当事者で話し合って決める制度です。
協議離婚との違いは?
日本の場合は、離婚のほとんどが話し合いで決める「協議離婚」になります。
協議離婚のメリットとしては、当人同士の合意のみで離婚が成立するため、時間も手間もかかりません。
協議離婚が成立せずに「お互いの話し合いでは解決できない」という状態になれば、離婚調停に進みます。
協議離婚は夫婦だけの話し合いですが、離婚調停は調停委員という第三者が間に入って話し合いをします。
また離婚調停の場合は、離婚に伴う「親権・養育費・面会交流・慰謝料・財産分与・年金割合」といった内容も取り扱います。
協議離婚の場合は、当人同士が「離婚するかどうか?」を決めるだけなので、親権や慰謝料といった問題は関係ありません。
離婚調停をすれば、離婚に伴う様々な問題を話し合って解決することができ、合意した内容は法的効力を持つ「調停調書」に記載されますので、協議離婚にはないメリットがあります。
調停前置主義
2人の話し合いで離婚の合意に至らない場合は、離婚をするかしないか、慰謝料や子供の養育費などをどういう条件にするかを裁判官に決めてもらうための「離婚訴訟」を提起することになります。
しかし、2人の話し合いが進まないからといって、次の日すぐに離婚訴訟を提起することは認められておらず、裁判の前に離婚について話し合う「調停」をしなければならないと決められています。
離婚裁判(離婚訴訟)の前に離婚調停の手続を踏まなければならない、というのが調停前置(調停を前に置く)主義といわれる裁判所のスタンスです。
離婚調停の内容と終結
離婚調停は、裁判官や調停委員を交えた離婚に向けての「話し合い」です。「話し合い」なので、自分の希望を相手に無理やり強制させることはできません。
調停の日程、時間、期日の回数は裁判官が決め、その時間にあわせて裁判所に行かなければなりませんが、あくまで「話し合い」なので、相手が出席しないからといって無理やり連れてくること(勾引)はできません。
また、例えば、子供の養育費として月に100万円欲しいと考えていたとしても、裁判官や調停委員は一般的な「相場」を基準に考えるので、相場からかけ離れた要求は通りにくくなります。
調停の結果、当事者で離婚の合意ができた場合は、調停成立となりその場で離婚が成立し、裁判官は合意内容をまとめた「調停調書」を作成します。
「調停調書」は、裁判の「判決」と同じ効力を持ちます。
例えば、離婚に際して「夫は慰謝料として100万円を妻に支払う」という調停内容があったにもかかわらず、夫が支払ってくれない場合、「調停調書」をもとに夫の財産を差し押さえるなど、実効的な手段を取ることができるようになります。
逆に、当事者で離婚の合意に至らなかった場合は調停不成立となり、「離婚訴訟」として裁判がスタートすることになります。
離婚調停についてまとめると、以下のようになります。・裁判官が主導するので、日程などは思い通りにならない
・裁判官や調停委員の助け舟はあるが、あくまでも任意の「話合い」
・調停成立で離婚が確定、不成立で裁判に移行
離婚調停を行うメリットについて
離婚調停は裁判所への申請、調停委員との話し合いが必要で、時間・手間もかかりますが、離婚の話し合いが難航している人にとっては、おすすめの方法です。
下記では離婚調停を行うメリットについて紹介します。
調停委員の介入でスムーズに話し合いができる
離婚の話し合いは、お互いが感情的になってしまったり、考えるべき問題がたくさんありすぎて、話し合いがまとまらないことがあります。
さらに、子供がいると「自分は離婚したいけど、子供の生活を考えると離婚できない」と考えてしまうこともあるでしょう。
離婚問題は複雑で、家庭によって事情が異なり、当事者だけで話し合いをしても前に進まないこともあります。
そこで離婚調停をすれば、調停委員が介入してくれるため、客観的な視点からスムーズに話し合いを進めていくことができます。
夫婦の状況を把握し、解決にむけた具体的なアドバイスをくれることもあります。
「夫婦で話し合ってもケンカになるだけで、冷静な離婚協議ができない」という場合は、離婚調停に進む方でいいでしょう。
お互いに顔を合わせる必要がない
離婚調停は、夫婦で顔を合わせる必要がなく、妻・夫がそれぞれ調停委員と話をして、話し合いを進めます。
直接顔を合わせてしまうと感情的になってしまうかもしれませんが、調停委員とだけ話せばいいため、お互いのストレスも軽減されるでしょう。
慰謝料・財産分与・親権・養育費などの取り決めができる
離婚するときには、「慰謝料・財産分与・親権・養育費をどうするか?」という問題について話し合う必要があります。
お金や子供ことに関わる問題は争点になりやすく、お互いが譲り合わない場合は、離婚協議が泥沼化する可能性もあります。
離婚調停で調停委員を入れれば、それらの問題もしっかり解決したうえで合意形成ができます。
例えば「どっちが親権を取るのか?」という問題に対しては、調査委員が家庭状況・子供への調査を行ったうえで、決めてくれます。
夫婦だけで話し合っても解決できない場合は、離婚調停に進みましょう。
離婚調停が始まると、家庭裁判所に出頭したり調査官からの調査が入ったりします。
下記では、離婚調停の流れについて説明していきます。
①家庭裁判所への申し立て
最初に行うのは、裁判所への離婚調停申立てになります。
「離婚調停申立書」という書類を裁判所に送り、受理されると離婚調停が始まります。
②第1回調停期日が決まる
離婚調停の申立てをすると、裁判所は「◯月◯日に裁判所へ出頭してください」と連絡がきます。
裁判所へ出頭する日を調停期日といい、調停期日が設定されるとその日に裁判所へ行き、調停委員に事情を説明します。
調停委員と話すのは、それぞれ個別に行うので、調停期日に配偶者と顔を合わせる必要はありません。
第1回の調停期日が終われば、次回の調停期日が設定されます。
③合意するまで調停期日を繰り返す
第1回の調停期日で調停委員が聞いた内容を元に、お互いに合意できる条件を探します。
基本的には、「調停委員と話し合って条件を出す」→「調停委員が相手に提案して合意できるか確認する」という作業の繰り返しになります。
調停は通常、1回で終わることはありません。
月1回程度期日が入り、5~6回程度、6か月~1年で終了するケースが一般的です。
④調停の間に裁判所の調査が入るケースも
調停期間中に裁判所から、調査が入るケースもあります。
夫婦に子供がいて、親権の取得について話し合っている場合は、調査が入ることが多いです。
裁判所から調査官が派遣され、家庭の様子や子供への聞き取り調査などを行います。
そして調査結果を元に、調停が進んでいきます。
⑤内容に合意して調停が成立する
お互い条件に対して納得ができれば、裁判官が立ち合って調停の内容確認を行います。
調停が完了すれば、裁判所が詳細をまとめた調停調書を作成します。
調停調書は、離婚後の条件などへの法的効力を持つ書類になるのでとても重要です。
離婚調停の期間は?
離婚調停には申立てから3〜6ヶ月程度かかることが多く、調停期日は2〜4回で成立するケースが多いですが、双方の合意が得られない場合はそれ以上になることもあります。
親権や養育費、慰謝料、財産分与など、話し合いで決めなければならない問題が多いほど、離婚調停の期間は長期化します。
特に子どもに関することについては、調査官による調査が入る場合は、次の期日まで1ヶ月半〜2ヶ月程度かかることもあります。
お互いが離婚の条件について譲り合う場合は、早期に離婚調停が成立しますが、どうしても譲れない場合は話し合いが進まず、不成立となることもあります。
離婚調停を考えるタイミング
相手と冷静な話し話し合いができない
「相手が全く相手にしてくれない」
「相手の暴力・暴言があって、話し合うのが怖い」
「お互い感情的になって落ち着いて話合いができない」
などの場合は、離婚調停の手続を考えるのがオススメです。
離婚の話し合いはお互いが感情的になり前に進まないというケースが非常に多く、さらには、友人や親族を巻き込んで話が複雑化してしまう、ということもあります。
こうなってしまうと、協議離婚の成立は難しく、無駄に時間だけが過ぎていってしまいます。
何度か話し合いの場を設けようとしたけど失敗した、というような場合は離婚調停の利用を考えてみましょう。
離婚調停なら、裁判官や調停委員の第三者の客観的な意見を交えながら、話し合うことで前に進むことができます。また、その先の離婚訴訟も想定して、早めに離婚調停を行うのもいいでしょう。
離婚の条件の折り合いがつかない
「夫が慰謝料の支払いに納得してくれない」
「財産分与についてお互いが譲らない」
「子どもの親権・養育費について対立している」
などの場合にも、離婚調停を検討するのがおすすめです。
離婚する場合には、離婚するか・しないか、の他にも話し合わなければいけないことが山積みです。
離婚することは決まったけど、慰謝料の有無、夫婦で貯めた貯金や夫婦で購入した家財や不動産をどうするか、子どもの親権・養育費、面会など、離婚の条件で話が合わずトラブルになってしまうことも多々あります。
この場合、調停の次の裁判になったらどういう条件になるのかをあらかじめ想定しておく必要があります。
調停を行う前に2人で話し合う段階であれば自由に決めることができるので、たとえば、こちら側が慰謝料として100万円を求めたとして、相手が70万円なら支払うことができると言っている場合は、相手の要求に従った方が賢明なこともあります。
裁判覚悟で調停を行った場合、裁判所は「相場」を基準に考えるため、自分の希望が通りにくいのはもちろん、仮に「相場」が50万円であった場合、相手が認めた70万円より低い額になってしまう可能性もあります。
そうであれば、こちら側が譲って70万円で協議離婚を成立させたほうが自分に有利な形で離婚できることもあります。
また、「離婚調停」→「離婚訴訟」となればだいたい1年以上の時間がかかり、その間の精神的負担、弁護士などの専門家を雇う場合の費用など、様々な負担がかかります。
そのため、離婚条件で折り合いがつかない場合は、弁護士などの専門家に相談して、離婚調停や離婚訴訟をした場合の結果をあらかじめ想定し、協議離婚とどちらの方がメリットがあるかを考えてみることをおすすめします。
離婚調停のQ&A、調停の前に万全な準備を
Q1調停費用ってどれくらいかかるの?
調停にかかる費用としては大きく分けて2つあります。
1つ目は、調停申し立て自体にかかる実費です。①調停申立書に貼付する収入印紙代 1,200円
②裁判所に予納する郵券(切手) 800円
③裁判所に提出する戸籍謄本、住民票代 計約750円
④その他、離婚以外にも財産分与、養育費や慰謝料請求なども調停で話合う場合、その分も印紙税として1,200円ずつ必要になります。
離婚だけを求める場合、実費として3,000程度必要になります。
2つ目は、もし弁護士を雇う場合は、弁護士費用が必要になります。こちらは弁護士によって異なりますが、一般的な相場としては、最低でも50万円以上は必要になることが多いです。
離婚調停は本人だけでも利用できる制度です。
プロである弁護士に依頼することには大きなメリットがありますが、高額な費用がかかるため、弁護士会や各市町村が主催する無料相談会などに出向いてみたり、事前によく調査・検討してから依頼するとよいでしょう。
Q2離婚調停が終わるまでにどれくらい時間がかかるの?
離婚調停の期日はだいたい月に1度を3~6回程度、執り行うのが一般的とされています。長い場合、半年程度かけて調停手続きを行います。
その間に調停が成立すればその場で離婚が確定し、調停は終了となります。
調停不成立の場合は、その後に離婚訴訟が開始され、こちらも月に1度を3~6回程度、裁判の期日を開き裁判官が当事者の主張を聞いてから最終的な判断を下します。
以上から、離婚調停の開始から裁判の決着がつくまでは1年以上かかるのが一般的だと考えておきましょう。
Q3離婚調停は「話し合い」、相手と顔を合わせないといけない?
離婚調停は「話し合い」ですが、夫婦で顔を突き合わせて話し合いをするわけではありません。
離婚調停が始まるとまず、裁判官から調停手続きの説明がされます。この場では、両者そろって裁判官から話を聞くことになります。
その後、離婚調停を申し立てた人から別室に呼ばれ、裁判官・調停委員と面談をして、自分の主張・希望を述べたり、裁判官・調停委員から質問をされたり、アドバイスを受けたりします。
その後退室して、次は相手が別室に呼ばれ、裁判官・調停委員を通してこちら側の主張・希望を伝えてもらったうえで、相手の主張・希望を裁判官・調停委員が聞き取る、といったように交互に進めていきます。
なので、相手と顔を突き合わせて話をする必要はありません。ただ、最初の調停手続きの説明の際や廊下ですれ違ったりなど、タイミング次第では顔を合わせてしまう可能性もあります。
心配であれば、調停申し立ての時に裁判所に顔を合わせたくないと申し添えることで、一定の配慮は受けることができます。また、弁護士などの専門家を代理人にすることで、自分は裁判所に行かなくてよくする方法もあります。
ただし、離婚調停が成立する日は必ず裁判所に行かなければならず、裁判官も調停条項の最終確認するために、2人が同席しなければなりません。
Q4「調停委員」ってどんな人だろう?
調停委員は「一般市民の良識を反映」させるために「社会上の豊富な知見を有した人」の中から選任されます。
基本的には、弁護士や大学教授など専門的な知識を持った人や地域社会に長らく貢献してきた人など裁判所の基準で選ばれます。裁判官のような「白」「黒」の目線ではなく、一般的な了見を備えた人に客観的に参加してもらい、柔軟な解決を図ろうという趣旨になっています。離婚関係の場合だと男性・女性の調停委員が1人ずつ選任されることがほとんどです。
離婚調停は、2人だけで離婚の話し合いができない場合に、離婚を前に進めるための制度です。一般人としては「裁判所」が介入すると聞くだけで身構えてしまいがちですが、手続の内容・趣旨を理解し、準備をすれば硬直して前に進まなかった離婚の話し合いを進めることができる有効な手段です。
相手と遺恨が残らないように、自分にとって有利な形で離婚して、新しい生活を迎えられるようにしっかり準備しておきましょう。
Q5プライバシーは守られているのか?
協議離婚と違い、離婚調停の場合は家庭裁判所に行ったり、調停委員と話したりする必要があります。
気になるのが「プライベートが守られているのか?」ではないでしょうか。
離婚の事実は周りの人には知られたくないと思うはずです。離婚調停は非公式で行われるため、プライバシーは徹底的に保護されています。調停が行われたこと自体、自分が誰かに離さない限り、知られません。
調停委員が秘密を公開するようなこともないです。離婚調停を行ったとしても、プライベートは守られているので、安心してください。
Q6離婚を考える前に別居した方がいいのか?
離婚を考えているなら「別居をして冷却期間を作った方がいいのか?」と思うかもしれません。
離婚前に別居することで、離婚の理由を作るというケースもありますが、別居するかどうかは状況によって異なります。
別居が離婚の理由として認められるには、5〜10年の期間が必要で、時間がかかります。
「別居しても生活は成り立つのか?」「同居したままだと婚姻関係を継続できそうにないか?」など、考えるべきポイントが複数あります。
もし話し合いで離婚が決まらずに「離婚調停に進むか、別居をして距離を置くか」と悩んでいるなら、弁護士に相談して適切なアドバイスをもらいましょう。
離婚調停で事前に準備しておくべきもの
調停作業をスムーズに進めるために、準備するものを紹介します。
必ず準備しておくべき4つのもの
まず必ず準備しておくべきものは、下記の4つです。・夫婦関係調整調停申立書
・申立人の印鑑
・戸籍謄本
・年金分割のための情報通知
夫婦関係調整調停申立書とは、離婚調停を申し立てるときに裁判所に提出する書類で、裁判所のホームページからダウンロードできます。
申立人の印鑑・戸籍謄本は、身分証明のために必要です。
年金分割のための情報通知書は、離婚の際に年金分割をする人のみ必要になります。
年金分割とは、離婚後に受給年金の多い方が少ない方に分け与えるもので、例えば専業主婦とサラリーマンの熟年離婚の場合、専業主婦をしていた方は国民年金のみの受給になります。
年金の納付は夫婦の共有財産として扱うため、サラリーマンの夫は専業主婦の妻に年金を分け与えなければいけません。
このように、年金分割を申請する場合は、年金分割のための情報通知も必要になります。
準備しておくと便利なもの
上記では、必ず準備しておくべきものを紹介しました。
ここからは、「あると調停作業がスムーズになる」という準備物を紹介します。
調停作業をスムーズに進めたい方は、こちらの準備物も揃えておきましょう。・相手に求める条件を書面化したもの
・離婚に至るまでの理由をまとめた書類
・申立書のコピー
・離婚調停の呼び出し状
・身分証明書・印鑑
・銀行通帳
・メモ用紙
・財産分与の根拠となる書類・通帳
・慰謝料請求する場合の証拠
・控室での待ち時間をつぶせるもの
調停委員には自分で説明する必要があるため、スムーズに説明できるようにメモを準備しておくといいでしょう。
さらに財産分与・慰謝料請求する場合は、証拠・根拠となるようなもの持っておいてください。
財産分与だと、不動産登記事項証明書・固定資産評価証明書・預金通帳のコピーや残高証明書などです。
離婚調停ではどのようなことを聞かれるの?
離婚調停を進める中で、調停委員などから質問をされることがあります。
離婚調停は離婚について判断するための調停なので、質問事項も離婚や婚姻生活にまつわる内容になります。
質問されてから慌てないように、離婚調停でどのような質問があるか知っておきましょう。
離婚調停でよく聞かれる質問は5つあり、離婚調停でほぼ確実に聞かれると思って事前に答えを用意しておきましょう。
質問に対してどのように答えるのか脳内でシミュレーションしておくことは、スムーズに調停を進める上でも重要です。
結婚の経緯について
「なぜ離婚したいのか」「どうして離婚調停に至ったのか」を説明するための前提として、結婚した経緯について聞かれます。
離婚というひとつの終着点を説明する前に、スタート地点の説明をするのです。
ただ、結婚に至るまでのデートやおつき合いの楽しい思い出を情感たっぷりに熱弁する必要はありません。
あくまで「離婚に至るまでの経緯のスタート地点」として説明するだけなので、結婚の経緯を簡潔に説明すれば問題ありません。
結婚に至るまでのことを時系列にメモなどにまとめておくと、簡潔に説明しやすいのではないでしょうか。
基本的に結婚の経緯はほぼ必ず聞かれますので「出会い」「結婚までのエピソード」「結婚」について、自分なりに説明できるようにまとめておきましょう。
なぜ離婚しようと考えたのか
「なぜ離婚しようと考えたのか」という質問は、離婚調停の内容によっては「離婚しない方がいい」という結論で終わることもあるため、とても重要になります。
また、離婚調停はそもそも離婚の判断のために開かれる手続きでもありますから、「なぜ離婚したいのか」という理由は、話し合いの起点であると同時に、重視される部分でもあります。
調停委員などにも分かりやすいように、しっかりと質問に答えましょう。
質問に答えるときのポイントは、「要点を整理すること」と「感情移入し過ぎないこと」です。
離婚をしようと思った理由を語るときに、取り留めもない話になってしまうと、第三者である調停委員などにとって話が分かり難くなってしまいます。
質問に答えているときに大泣きしてしまったら、そこで「大丈夫ですか?」と流れがストップしてしまうこともあります。感情が高ぶってしまうのは仕方のないことですが、しすぎには注意が必要です。
「離婚を決めた理由は〇〇です」と、要点がはっきり分かるかたちで伝えることが重要です。
その上で「婚姻関係を継続しようと思ったのですが、もう離婚しか方法がないようです」と、しっかりと自分の気持ちを伝えることがポイントになります。
夫婦関係が修復する可能性はあるか
「今後、夫婦関係が修復する可能性があるか」についても、離婚調停の場でよく聞かれます。
夫婦関係が修復可能であれば、あえて離婚する必要はなく、元に戻れるならそれに越したことはないからです。
夫婦間でちょっとした喧嘩があったとします。それで離婚を決めたのなら、「離婚したいという気持ちは一過性のものではないか」と調停委員は感じることでしょう。
離婚したいという気持ちは一過性のものではなく、関係修復の努力をしたがもはや関係修復は不可能である、関係修復の可能性はない、というような「よく考えた結論であること」「関係修復はできない(婚姻関係の継続は不可能である)」「関係修復のためにすでに手は尽くしたのだ」という点を、しっかりと説明することが重要です。
夫婦生活の現状についての確認
離婚調停の場では、夫婦生活の現状についても聞かれることが基本です。
夫婦生活を調停委員などに説明することには、恥ずかしさがともなうかもしれませんが、気にする必要はありません。
調停委員は離婚調停の調停委員という役目を負って席についていますので、あくまで調停委員として話を聞くだけです。
調停委員は離婚話に慣れているので、離婚を望む女性(あるいは男性)が少しくらい際どい話をしても、特に驚きません。
離婚に繋がりそうな事柄は、しっかりと説明しておきましょう。
財産分与・養育費・婚姻費用・慰謝料・親権について
離婚調停では、離婚にまつわるお金や子供のことも聞かれます。
離婚に際して財産分与や養育費、慰謝料などの希望があれば、しっかりと主張することが重要です。
主張するときは、具体性や数字、根拠が大切になります。
「養育費は多く欲しい」と伝えても、なぜ多く欲しいのか、具体的にどのくらい欲しいのかが伝わりません。
「子供の学費に月〇万円かかる」など、根拠や具体的な数字を説明するといいでしょう。
親権についても、「自分が子供の引き取って育てたい」と希望を伝えるとともに、子供の養育に必要な環境があることを具体的に伝えることが重要になります。
調停委員と話すときの注意点
離婚調停の結論には、調停委員の意見や判断が大きく影響します。
そのため、調停委員の質問に対する答えや調停委員に与える印象についても注意しておく必要があります。
調停委員と話すときに特に注意したいポイントは3つあります。
調停委員の共感を得られるか注意して話す
離婚調停では、調停委員の共感を得られるかどうかが重要になります。
なぜなら、調停の結果は調停委員の意見や印象が影響するからです。
調停委員を味方につければ、調停の結果が自分の望む方向に動くと言っても過言ではありません。
そのため、話し方や話す内容に対して「調停委員はどのような印象を持つだろうか」と考えて話したり、伝えたりすることが重要になります。
調停委員は、夫婦双方の話を順番に聞きます。
そのときに、相手ばかりを弾丸のように責めたり、愚痴しか言わなかったりしたら、どうでしょう。
また、離婚したいという意思を伝える場合でも「関係維持に尽くしましたが、修復は難しいと判断して離婚という結論に至りました。今ならまだ30代で、お互い仕事もしています。やり直すチャンスだと思いました」と話すのと、「相手が絶対に悪いので無理です。財産分与も養育費も、たくさん欲しいです。相手の生活が破綻してもかまいません」と話すのでは、第三者的存在である調停委員の印象が変わってくるでしょう。
調停委員の共感を得られるよう、丁寧な言葉遣いや誠実さを心がけ、離婚することのメリットなども織り交ぜて話すことがポイントになります。
話に一貫性を持たせて要点を明確にする
調停委員と話すときに注意したいポイントの2つ目は、「話に一貫性を持たせること」と「要点を明確にすること」です。
多少感情的になってしまったり、結婚生活の辛さが口から飛び出してしまったりすることも、ときにはあるでしょう。
調停委員の共感を得るためには、気持ちを込めて話すことは、ある程度重要であると考えられます。
しかし、注意しなければならないのは、離婚調停は愚痴を聞いてもらう場や慰めの場ではないということです。
愚痴や辛かった思い出話に終始してしまうと、調停委員は「要点は何だろう」と思ってしまうことでしょう。
話の脱線や愚痴、極端な感情論などは避け、話の要点をしっかり伝えましょう。
また、主張には一貫性を持たせることも重要です。
さっきは右と言っていたのに、今は左と言っている、というような場合、調停委員の心証に良い影響を与えるとはいえません。
調停委員は双方の話を聞きますので「嘘を言っているのではないか」「離婚についての意見も誤魔化しがあるのではないか」と思われてしまうかもしれません。
自分の意見に関する裏付けを伝える
調停委員と話すときの3つ目の注意点は、「意見に関する裏付けを説明する」という点です。
たとえば、「婚姻関係を維持するために、手を尽くしました」と主張したとします。
主張だけなら誰でもできますので、その根拠や裏付けがないと、せっかくの主張が空虚なものになってしまいます。
手を尽くしたなら具体的にどのように手を尽くしたのか、金額を主張するならなぜその金額になるのか、親権が欲しいなら親権を得てもやっていけるのか、という具体的な裏付けを意識することが大切です。
たとえば、調停委員に「養育費を月10万円欲しい」とだけ伝えた場合と「学費〇万円と子供の生活費〇万円。将来的に子供は大学進学を希望しており、そのための塾費用に〇万円必要です。夫の年収は〇百万円なので、支払える額ではないでしょうか」と裏付けも付け加えた場合とでは、どちらに対して説得力を感じるでしょうか。
主張の内容や意見に対する裏付けも可能な限り伝えることが重要です。
離婚したい理由を調停委員へ適切に伝える方法
離婚調停の場合、離婚理由が重要になります。
民法には法定離婚事由(離婚できるケース)が定められており、離婚調停の場では離婚したい理由が法定離婚事由に重なっているかどうかもチェックポイントになります。
民法770条に定められる法定離婚事由は全部で5つあります。
法定離婚事由
- ・不貞行為
- ・悪意の遺棄
- ・3年以上の生死不明
- ・強度の精神病により回復の見込みがない
- ・その他の婚姻を継続し難い重大な事由がある
離婚したい理由を述べるときは「法定離婚事由に重なりがある」ことをアピールし、「正当な離婚理由である」「法律によれば離婚できる事由に該当するのだ」という結論に繋げることが重要です。
では、事由ごとに、どのように離婚理由をアピールするのでしょう。
不貞行為
不貞行為とは、配偶者の不倫や浮気のことです。
「結婚しているのに自分以外の異性と話すことすら浮気」という人もいるかもしれませんが、離婚調停などの法律の場における不貞行為(浮気や不倫)の判断基準は、「肉体関係の有無」です。
配偶者が自分以外と肉体関係があることを、裏付け(証拠)を示して主張することで、離婚できる可能性がアップするでしょう。
悪意の遺棄
悪意の遺棄とは、夫婦なのに「もう片方を面倒見ず、捨てる(放置する)」ということです。・病気なのに放置し、看病しない。
・生活費を渡さない。
・家に入れない。
・同居を拒否されている。
以上のような行いは、悪意の遺棄に該当する可能性があります。
このような理由がある場合は、悪意の遺棄があったと主張することによって離婚が認められやすくなります。
生活費を渡してもらえず苦労したエピソード(実体験)などを、簡潔に共感してもらいやすく伝えるといいでしょう。
他に不倫やDV、モラハラなどがあった場合も、忘れずに伝えておきましょう。
3年以上の生死不明
配偶者が3年以上生死不明の場合は、法定離婚事由として離婚が認められる可能性があります。
ただし、離婚調停は相手が判明しているケースが基本なので、離婚調停でこの離婚事由を使うケースはあまりないかもしれません。
強度の精神病により回復の見込みがない
自分自身が強度の精神病にかかっているケースではなく、配偶者が強度の精神病にかかっているケースになります。
精神病という「病気」が関係しますので、医師の診断書(見立て)などを参考に、離婚について話し合われることになります。
夫婦にはお互いに助け合う、相互扶助義務があります。
しかし、精神病にかかって回復の見込みがない場合は、義務が果たせないことになります。
精神病にかかっていない側の配偶者だけが一方的に義務を負うことになってしまうため、状況や医師の見立てを慎重に考慮して離婚が判断されることになるのです。
その他の婚姻を継続し難い重大な事由がある
上記の4つに該当しない場合は、「その他」に該当します。
モラルハラスメントやDV、性格の不一致や性の不一致、極度の浪費癖やギャンブル癖、薬物依存などがこの理由にあたる代表例です。
その他の婚姻を継続し難い重大な事由は、判断の難しい離婚事由になります。
離婚調停を申し立てた本人は「該当する」と思っても、調停委員は「該当しない」と判断することもあります。
ケースによってどのように主張すべきかが異なるところも難しいポイントになります。
その他の婚姻を継続し難い重大な事由での離婚は、先に弁護士に相談して、離婚調停でどのように主張するのか計画を立てておく方が安全で、より認められやすくなることでしょう。
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